認可保育園の施設整備

平成23年の厚生労働省発表の数値によると、全国の保育所数は21751か所(認可外、公立含む)、在所者数(利用者数)は200万人を超えています。もちろん全国の社会福祉施設の中で一番多く、全体数の40%以上を占めております。なお、施設数のうち私立保育所の割合は50%強となっております。

これからの保育所のあり方を考える上で、児童数の推移を見ていく必要があります。

保育所利用児童数は、1994年まで減少していましたが、1995年に上昇に転じその後は増加を続けています。その中で、話題になっている待機児童数は、関東(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)、関西(京都府・大阪府・兵庫県)を中心に、解消されていません。

このため、国の待機児童解消策の一つとして、『安心こども基金』という施設整備費を含む補助金が創設されました。平成20年度に補正予算化されたこの補助金は、平成26年度までの予算化までは議論されておりますが、平成27年度以降の動向については未定です。

専門家によれば、待機児童数は平成29年度以降に減少すると見込まれており、それ以降は手厚く施設整備の補助金が予算化されるかどうかは不明なところです。

このような流れを考えていくうえで、社会福祉法人立の認可保育所の施設整備は、どのように行っていくべきなのでしょうか?考え方が3つあります。

待機児童解消を伴う新設、建てかえ

待機児童が多い自治体にある施設では、定員増を目的とした新設、分園設立、建てかえ等のニーズがあります。平成26年度まで安心こども基金が延長されるとして、この機会に新設、建てかえ等の施設整備を検討することをお勧めしています。また、補助金申請の協議には時間がかかることから、早めに市区町村の担当窓口に相談する等して、事業計画、施設プラン、資金計画等を作成するなどの準備を進めていく必要があります。

安全面に配慮した建てかえ

築年数が古く、老朽化が進んでいる施設、耐震基準を満たしていない施設など、安全面で不安のあるものについては、この機会に施設整備を検討することをお勧めしております。後述する、老朽度調査や耐震調査等で施設の現状を知り、不安視されるような結果が出た場合には、補助金を使って建てかえ事業化できる可能性があります。

また、施設内の設備の老朽化などにより、修繕に多大な費用がかかる場合があります。年間で数百万円の修繕費をかけているような施設がありましたら、これも建てかえを検討できる場合があります。早めに市区町村の担当者と相談して、安心して使用できる施設にしていきましょう。

建物の長寿命化

施設の築年数が比較的新しく(築15~20年以内)、建てかえするほどではない施設はどう考えればいいでしょうか。10年後の施設整備にかかる補助金は期待できないかもしれません。建てかえ等施設整備に関する補助金が期待できないとなれば、法人独自で資金を準備するより方法がありません。

しかしながら、毎年の積立金で10年後に建てかえ資金を確保することはとても難しいことです。このような場合、長期修繕計画を作成し、計画的に修繕を行い、大切に長く現有施設を使用することをお勧めします。

多くの施設では、修繕計画自体を作成しておらず、故障個所が発生した都度修繕しているのが実情のようです。これでは、工事の手戻りも多く、無駄に修繕費を使ってしまう可能性もあります。

また、建物の躯体(建物を支える主要構造部分)も定期的にメンテナンスしていかないと、建物に不具合が出た場合、多大な費用が掛かる場合があります。

このように、施設を長く使用するために、修繕費用を抑える工夫をすることが、施設の安定運営につながると考えられます。

現有施設が今、どのような状況にあり、今後どのように施設運営をしていくのか、補助金の動向と合わせて、早急に検討してみてはいかがでしょうか。

 

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